時代の変化が激しい今、創業100年を超えて続くお店がある一方で、開店からわずか数年で静かに姿を消していくお店も少なくありません。永遠に続くお店はない。それは事実です。それでも、取材で数多くのお店を訪れる中で、「この店は簡単にはなくならないだろう」と感じる瞬間がありました。
その共通点は、店づくりの出発点が、店主自身の「好き」から始まっていること。
本記事では、取材を通して見えてきた長く続くお店に共通する特徴を紹介していきます。
生き残るお店に共通するのは、店主自身の好きだった
生き残るお店に共通していたのは、店主自身の「好き」から商いが続いているという点でした。
代々受け継がれてきた創業50年を超える老舗では、店主が三代目、四代目というケースも珍しくありません。必ずしも、創業者と同じものを同じ熱量で好きとは限らない。例えば、和菓子屋の息子が、必ずあんこが好きだとは限らないように。
それでも店が続いているのは、商品そのものではなく、別の「好き」を見いだせているからだと感じました。地元への想いだったり、この場所で商いを続けることだったり、受け継いできた歴史や、人とのつながりだったり。好きの対象は人それぞれです。
和菓子屋でありながら、あんこの技術やノウハウを活かして新しい形の商品に挑戦する。時代とともに形を変えながらも、「続ける理由」だけは手放さない。
創業者が健在で、純粋に「好きだから売っている」という店もあります。一方で、長く続くお店ほど、人が入れ替わる中で、自分なりの「好き」を見つけ直している。
その柔軟さこそが、お店が生き残っていく力なのだと思います。
「好き」がある店は、流行に振り回されない
例え景気が悪くても、自分なりの「好き」がある店主は、軸がブレません。その軸があるからこそ、流行に左右されず、少しずつでも共感してくれるファンが増えていきます。
一方で、「今どきだから」「流行っているから」という理由だけで商品を作ったお店は、長続きしにくいと感じました。分かりやすい例が、かつてブームになったタピオカです。一時期は街の至る所にタピオカ専門店が並びましたが、今ではほとんど見かけなくなりました。あのタイミングでタピオカを売っていれば、確かに一時的には売上が立ったかもしれません。ただ、「なぜそれを売っているのか」という軸がなければ、流行が終わった瞬間に、次に進む理由も失ってしまう。
取材を通して感じたのは、流行に乗らないことが強さなのではなく、自分で選んだ「好き」や「軸」を持っていること自体が、お店の強さなのだということでした。
取材で感じた「続く店」の空気感
それを強く感じたのは、取材で店主の方と直接話をしている時でした。
取材では、いい話ばかりを聞くわけではありません。思うように売れなかった時期のことや、物価高騰によって原材料の価格が上がり、経営が苦しくなったという現実的な悩みも耳にします。
それでも、長く続いているお店の店主は、そこで話が終わりません。
「売り方を少し変えてみようか」 「仕入れ先を見直してみようか」そんな風に、ネガティブな状況の中でも、次の一手を考えている。印象的なのは、その話をしている時の表情です。決して楽な状況ではないはずなのに、店主の目はどこか前を向いていて、むしろ少し楽しそうにさえ見えることがあります。
そういう瞬間に出会うたび、「このお店は簡単にはなくならないだろうな」そんな確信に近いものを感じました。
生き残るお店は、地域との繋がりも強固
取材をしていてもう一つ感じたのは、長く続いているお店ほど、地域とのつながりが強固だということでした。地元の食材を使っていたり、仕入れ先に地元の業者を選んでいたり。それは決して「地域のためにやっています」と声高に語られるものではありません。自分が本当に作りたいものを突き詰めた結果、その土地の素材や人とのつながりが、一番しっくりくる。ただそれだけなのだと思います。
取材したA店では、数十年続く歴史の中で、地域のお店が次々となくなっていく現実を目の当たりにしてきたそうです。その中には、閉店してしまったお店の味やレシピを引き継ぎ、形を変えてでも「この地域の味」を残そうとする取り組みもありました。
お店はなくなる。でも、なかったことにはならない。
そうやって受け継がれていく想いや味が、静かに、確実に地域の中に根を張っている。その話を聞いて、「このお店は強い」と自然に感じました。長く続く店は、自分の外側にあるもの(地域、人、歴史)とも、無理なく、そして長く関係を築いていく。
取材を通して、そんな印象を受けました。
まとめ
生き残るお店に共通する特徴は、店づくりの出発点が、店主自身の「好き」から始まっていることです。
世の中には、いい商品はたくさんあります。だけど、「いいお店」はまた別の話だと感じています。いいお店とは、商品の背景に人がいて、続ける覚悟があり、その土地と静かにつながっているお店。そういうお店が地域に残っていくことは、ただの消費ではなく、地域への投資なのではないでしょうか。だから私は、これからもそんなお店に足を運び、通い続けたいと思っています。


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